[ もくじ ... 人物プロット ]

True love knot 人物プロット

このファイルでは、ゲーム中の各キャラクターに設定されている大まかなプロットを説明しています。

プロットの中でゲームシステムに関連する用語が出てきますので、補足説明します。

シナリオの描写に「オープニング文章」と絡めている箇所があります。先にオープニングの方を見ていただけた方がご理解されやすいと思います。
STORY このアイコンで示される枠の中の文章は、プロットよりもやや踏み込んだシナリオの説明をしています。
夢 このアイコンで示される枠の中の文章は、「奇麗な眺め」イベントを過ごした後、松田シナリオ、エミリシナリオで見る「夢」の説明をしています。
これもプロットよりやや踏み込んだ説明をしています。

もくじ

沢之 松子(さわの まつこ)

沢之とはゲーム開始当初、主人公と「気が向いたら身体を合わせる」、セックスフレンドのような関係を抱いています。また、主人公とは別に何人かの性的関係を持つ『彼』も存在しています。
それは、一見すると他人と触れ合う事に抵抗を感じない、オープンな性格に見え、また、彼女も表向きにはそういう表情を見せています。
が、実際には彼女は他人と心が触れ合うのに非常な恐怖を抱いています。
彼女が身体を合わせるのは、相手の心が解らない恐怖から来るものがあり、まず精神より身体をあわせるという事項が優先していたからです。
それはある意味自虐的な行為と言えるものでした(彼女が他人に対してそういう行為をし始めたのは、学生時代に受けた性的トラブルに起因するトラウマ的なものが原因です)。

ゲーム内では主人公とエミリの関係を目の当たりにする事で、彼女は自身の行っていた行為に徐々に疑問を覚えるようになっていきます。

日にちのイベントプロット

1日目:
ゲームスタート
2日目:
(エミリが山登りに行きたいと言い出します)
3日目:
沢之を山登りに誘います。
4日目:
沢之と山登りに行きます。(この町の奇麗な眺めイベント)
この時のエミリと主人公のやりとりから、沢之は徐々に自身の行っている行為について疑問を覚えるようになっていきます。
5日目:
夕方に沢之と出会うとセックスイベントが発生します。
沢之自身は「単なる気まぐれ」で H したくなったといいますが、実際には主人公とエミリの関係を見た後、主人公が沢之に抱いている気持ちを、沢之が確認したくなったので行為に至っています。
6日目:
(ゲーセンの店長から8日目に夏祭りがあるということを聞きます)
夕方に沢之と出会うとセックスイベントが発生します。
この辺りから主人公の事を男として意識するようになり、それは微妙な言葉づかいの変化として現れてきます。
7日目:
沢之を夏祭りに誘いますが、沢之は「彼と約束があるから」という理由で断ります。
主人公の事を意識していますが、その言動にはまだ迷いが含まれています。
8日目:
夏祭り(この町の奇麗な眺めイベント)
この時主人公は神社の奥で沢之と見たことのない男性がキスをしているのを目撃します。
また、沢之もキスの最中に主人公が自分の事を見ているのを発見してしまいます。
主人公もこの段階で沢之に対する恋愛感情を意識することになります。
9日目:
(友人の荒川からプールのチケットを貰います)
主人公が沢之を見かけて挨拶しても、彼女はそれを無視してしまいます。
沢之自身の中には、夏祭りの時に見られたくない相手にキスを見られてしまった――という恥に似た感情が生まれつつあります。
10日目:
主人公が沢之を見かけて挨拶しても、彼女はそれを無視してしまいます。
が、主人公は半ばむりやり彼女にプールのチケットを渡します。
11日目:
プールに行きます(この町の奇麗な眺めイベント)
暫くプール場の前に居ても沢之は現れず、諦めてプール場の中に入ったところで、遅れて沢之がやってきます。
この日沢之は他の男と約束をしていましたが、それを破って主人公の前に現れました。
主人公はその事を知りません。
12日目:
エミリが主人公の部屋から突然消えます。
主人公は町で出会った沢之とエミリを探しますが、エミリは見つかりません。
「この町の奇麗な眺めイベント」を 3 回サブキャラと過ごした時点で、主人公の心はサブキャラ寄りにシフトします。
この時主人公がエミリに抱いている感情は、妹を心配する兄に近いものです。
13日目:
先日に引き続き沢之とエミリを探しますが、エミリは見つかりません。
沢之は初めてこの時自分の心に素直になり、「エミリ(ライバル)が消えて安心した」と言ってしまいます。
主人公は沢之の頬を叩きました。
頬を叩く事により、主人公の心の中で沢之の存在が大きくなります。

夜中、松田が家に訪れ「エミリは出て行くと言っていた。主人公に『ありがとう』と連絡してください」と言づけを受けたと聞きます。
14日目:
この日沢之は自身の男関係を清算しました。
いくつかの男は彼女の突然の別れに困惑し、暴行を働きました。

自分の家にも何処にも居場所がなくなった沢之は、夕方一人学校に向かいます。
主人公は昨日の行為が気になって沢之を探すのですが、なかなか見つけることができません。
沢之を探している間、主人公は自身の中で彼女への想いが募っていたのを改めて感じる事になります。

夕方、主人公が高校に向かえばパッピーエンドへの道筋が出来る事になります。
学校で出会った主人公と沢之は、お互いの想いを確認して、まるで初めて身体を合わせる恋人同士のようなセックスをしました。
15日目:
朝、学校の教室から日が昇るのを見た二人は「お互い不器用だけど、これから二人でなんとかやっていこう」、と、確認しあいました。
物語の終了です。

松田 祥子(まつだ しょうこ)

松田は遠い未来の世界において、おばあちゃん助手の作業手伝いを行っている少女です。

本来単なる作業手伝いに過ぎなかった彼女ですが、おばあちゃん助手の作業手伝いを行っているうちに、彼女の中に「こんな過去を追い続ける装置になんの意味があるのだろう」という疑問が生まれ始めました。
その疑問は彼女の中で日増しに大きくなり、ついにはおばあちゃん助手の制作した装置をハッキングして「主人公の世界」に入り込むという行為にまで至ってしまいます(彼女は未来の世界ではちょっと名の知れたハッカーです)
主人公の世界に行き、そして主人公に「貴方の肉体は存在しない、これ以上おばあちゃん助手を苦しめないでほしい、消えてほしい」と、はっきり伝えるのがその目的でした。

主人公と会話を進めるうちに、次第に彼女は主人公のポジティブな姿勢に惹かれていく事になります。
それは「主人公の居る [ 世界 ] は確かに過去の思い出に彩られた [ 世界 ] だけれど、主人公という [ 人 ] はその過去の世界の中で [ 現在 ] を生きている」という事実を彼女に認識させる事になりました。

やがて彼女の主人公へ対する意識は、当初抱いていた[消えてほしい]という願いとは全く正反対なものに意識は変化していきます。
が、そうなると今度は主人公が「この町で一番奇麗な眺め」を探さないで欲しいと彼女は願うようになりました(もし、主人公が自己の肉体が存在しないと悟ってしまうと、主人公は世界から消滅してしまうのですから)。
まるで幼稚な子供のように主人公の行動に反対をし始める彼女ですが、その思いとは裏腹に、時計の針は確実に消滅へと時を刻んでいきました。

日にちのイベントプロット

1日目:
ゲームスタート
2日目:
(エミリが山登りに行きたいと言い出します)
高校の校門前で(無理矢理)身体をぶつけられて主人公と松田は出会います。
この日の夕方、アパートでもう一度彼女に会った主人公は、松田が主人公と同じアパートに住んでいる事を知ります。
3日目:
主人公は松田を山登りに誘います。
松田はしぶしぶ了承します。
4日目:
松田と山登りに行きます。(この町の奇麗な眺めイベント)
この時から松田は少しずつ主人公の事を意識しはじめます。

(既にエミリのエンディングを迎えていた場合)エミリシナリオと同じ「未来の景色」の夢を見ます。
5日目:
(夢を見ていた場合)松田に夢の内容を聞かせます。松田は幾分複雑な表情で「それはいつか、本当に起きる事かもね」と答えます。
それはとても冷めたい声でした。
この時、主人公は松田の冷たい一面を垣間見ることになります。そしてその時の彼女の声を、どこかで聞いたことのある声だと感じます(それはオープニングの電話の声です)。
6日目:
(ゲーセンの店長から8日目に夏祭りがあるということを聞きます)
――
これまでの数日間において、たとえ挨拶をして無視されようと、主人公は町で松田と出会う度に彼女の相手をしました。
松田はそんな主人公の姿を見て、自分の想像していた主人公像と何かが違うらしいと思うようになりました。
7日目:
夏祭りに誘います。松田は了承します。
8日目:
夏祭り(この町の奇麗な眺めイベント)
松田は打ち上げられる花火を見ながら、「この世界」にこんな奇麗なモノがあったのだと驚きます。
祭りの最中に、はしゃいだ松田とエミリは主人公の元を離れ、神社の奥の方に行ってしまいます。結果神社をうろついている怪しげな少年グループに二人がからまれてしまいますが、行方を探し当てた主人公が二人を救います。
この時に松田は主人公を意識しているという事に気がつきます。

(既にエミリのエンディングを迎えていた場合)エミリシナリオと同じ「未来の景色」の夢を見ます。
9日目:
(友人の荒川からプールのチケットを貰います)
(夢を見ていた場合)松田に夢の内容を聞かせます。主人公の事を意識し始めた松田は、「夢は夢でしょう?」と答えます。
10日目:
松田にプールを誘います。
11日目:
プールに行きます(この町の奇麗な眺めイベント)
三人はまるで幼い子供の様に遊びました。
この時点で松田は完全に主人公の事を意識しています。

(既にエミリのエンディングを迎えていた場合)エミリシナリオと同じ「未来の景色」の夢を見ます。
12日目:
エミリが主人公の部屋から消えます。
主人公は町で出会った松田とエミリを探しますが、エミリは見つかりません。
「この町の奇麗な眺めイベント」を 3 回サブキャラと過ごした時点で、主人公の心はサブキャラ寄りにシフトします。
この時主人公がエミリに抱いている感情は、妹を心配する兄に近いものです。
松田はこの時、エミリが消えてしまったという事は自分を「思い出の町」に送り出した装置に何らかの異常が起きたのではないかと思い、機械のチェックを行います。
チェックして出た結果は、エミリに加えて松田という「例外的な存在」が「思い出の町」に登場した事で、例外排除機構の動きが強まり、予定より早くエミリが世界から消滅してしまったという事実でした。
松田は悩んだ後、主人公に「エミリは出て行くと言っていた。主人公に『ありがとう』と連絡してください」と言づけを受けたと嘘を言います。
(夢を見ていた場合)主人公は松田の様子から、夢の内容を今自分のいる世界と照らし合わせます。そして、自分の中の世界の不安定さに気付きはじめます。
13日目:
松田から主人公にどこかに行かないかと誘われます。
主人公は松田の突然の行動に戸惑いつつも、それを受けます。

それは彼女にとって初めての、本当に心から楽しめる異性とのデートでした。
松田はこの時点で、エミリと同様に自分の身体もそう長く「今の主人公と共に時を過ごしている」この世界にいられないと気付きます。
確かに松田の「身体」のデータは、消滅が起きそうになっても、彼女の技術で「待避」させ、未来の世界に戻ればそれをやり過ごすことはできます。
けれど、それは「待避」にすぎません。一度主人公の世界から「排除」されたデータは、ずっと同じカタチで主人公と同じ時を共有する事ができません。つまり主人公のそばにずっと居続ける事は出来ないのです。
待避――それは主人公と共に過ごした記憶を失ってしまう事を意味していました。

(夢を見ていた場合)松田は主人公に夢を見ていたかどうか聞きます。主人公は見ていないと嘘をつきます。
14日目(夢を見ていない場合):
主人公は松田とデートを楽しみます。松田の様子が明らかにおかしいのですが、それには気付かないフリをします。
デートが終わった後、二人は主人公の家に行き、寄り添うようにして唇を合わせ、身体を合わせました。
15日目〜END(夢を見ていない場合):
朝、主人公の目の前で松田は霧の様に消えていきます。
呆然とする主人公に向かって、松田は「いつかまたカタチを変えて主人公の前に現れる」と言い残し、静かに消えていきました。
物語の終了です。
14日目(夢を見ている場合):
主人公の家に、オープニングで電話を掛けてきた人物と同じ人から電話が掛かってきます。
電話の声は「エミリをよく預かってくれた、ありがとう。そしてさようなら」と言います。主人公は返事も曖昧に、「急にトイレに行きたくなったから、少し待っててくれ」と言い、電話を繋げたまま部屋を出ます。
松田の部屋にベランダ沿いで入り込んだ主人公は、そこで受話器を持ったまま主人公の方を呆然と見つめている松田の姿を見つけます。
松田はここで、主人公も自身に起こっている事を察していたのだと気付きます。

二人はデートを楽しみます。夕方、松田のリクエストで小さな花火セットとバケツを買い、神社に向かいます。
彼女は花火がお気に入りでした。花火が終わった後、主人公は境内にお参りをしようと言います。なにかの願い事をする二人。
林の中で、二人はごく自然に身体を合わせました。
15日目〜END(夢を見ている場合):
朝、林の中で二人は霧のように消えかけていきます。
あと少しで身体の全てが消えそうになった時、二人は離れたくないと強く願いました。
それは自分たちの存在を受け入れ、認め、それでもなおこの世界に居たいと願う強い気持ちでした。

光に包まれる中、主人公はひどく懐かしい声を聞いたような気がしました。その声は、いつか自分が妻として愛した人の声に似ている様に思えました。
声は言います。「この世界は私が責任を持って護るから、あなたはこの世界で生きなさい」と。

目が覚めると、主人公は裸のままで自分の部屋に寝ていました。朝日が昇っているのが分かりました。良い匂いがします。
匂いをたどって台所を見ると、松田が朝食の準備をしていました。暫く待つと、目玉焼きがのった皿を持って、松田がテーブルにつきました。
ちょっとカタチがくずれちゃったけど」彼女は恥ずかしそうに主人公に言いました。
「少しぐらいカタチがくずれた方が美味しいんだよ」主人公はそういうと、彼女にキスをしました。
少し焦げた目玉焼きを口にしながら、二人は「この人と世界を生きていこう」と静かに決意するのでした。
物語の終了です。

塩原 恵美子(しおはら えみこ)

塩原は主人公と同じアパートに住む大家の娘です。主人公がアパートに引っ越しに言った時の挨拶がキッカケで知り合いました。物語当初、主人公とは兄と妹の様な関係です。

ゲーム開始当初、塩原は西園寺と付き合っていたのですが、西園寺はエミリの方に気を引かれ、塩原をフってしまいます。
エミリは悪くないと分かっていながらも、エミリに当たってしまった彼女はその自身の行為を深く嫌悪します。
自暴自棄になりつつあった彼女の手を掴んだのは、気付かないぐらい近い所に存在していた一人の青年でした。

日にちのイベントプロット

1日目:
ゲームスタート
2日目:
(エミリが山登りに行きたいと言い出します)
(西園寺がエミリと出会います)
3日目:
山登りに誘いますが、彼女は「約束があるから行けないかもしれない」と断ります。
断りはしますが、この時点でストーリーは塩原ストーリーに分岐します。
4日目:
山登りに行きます。(この町の奇麗な眺めイベント)
主人公は頂上に上って景色を見た時に、この景色はどこかで見た景色だと思いますが、結局思い出すことは出来ません。
帰り道、駅前で一人ベンチに座っている塩原を見かけ、声をかけますが彼女は曖昧に返事をして、どこかへ逃げるように去ってしまいます。
この時塩原と西園寺は駅前でデートの待ち合わせをしていたのですが、西園寺はその約束を破って現れなかったのでした。
5日目:
町で塩原を見かけた時に声を掛けますが、いつもの元気がありません。
6日目:
(ゲーセンの店長から8日目に夏祭りがあるということを聞きます)
町で塩原を見かけた時に声を掛けますが、やはり元気がありません。
7日目:
塩原を夏祭りに誘いますが、塩原は「西園寺と行くから」と言って断ります。
8日目:
夏祭り(この町の奇麗な眺めイベント)
主人公はエミリと花火を見ながら、やはりこの光景はどこかで見たことがあるような既視感を覚えます。
が、それが何であるかを具体的に思い出すことはできません。
祭りの最中、主人公は神社の境内の角で、西園寺に振られる塩原の姿を目撃してしまいます。
呆然としている塩原に、それをのぞき見していた怪しげな少年グループ(松原プロットに出てくる人物と同一です)が声をかけてきますが、自暴自棄になりつつあった彼女は男を振り払おうともせずに、男の言う通り薄暗い境内の奥に連れて行かれそうになってしまいます。

慌てて止めに入った主人公ですが、一対多数では力でかなう筈もなく、少年たちにボコボコにされてしまいます。
これはもう駄目かも、と思った時、エミリが連れてきた腕っぷしが強そうなテキ屋の親父のおかげでなんとか事なきを得る事ができました。

けれどその「恩人」とも言える相手のエミリに向かって塩原の口から出た言葉は、「余計な事をしないでよ、あなたの顔なんか見たくもない ! 」という冷たいものでした。
塩原のあまりの言葉に彼女の頬を叩く主人公ですが、塩原は目に涙を浮かべながらその場を立ち去ってしまいます。
9日目:
(友人の荒川からプールのチケットを貰います)
町で塩原を見かけた時に声をかけますが、彼女は逃げてしまいます。
10日目:
町で塩原を見かけた時に声をかけますが、やはり彼女は逃げてしまいます。
主人公は彼女を追いかけ、プールのチケットを押しつけるようにして渡しました。
11日目:
プールに行きます(この町の奇麗な眺めイベント)
塩原の家に誘いに行くと、暫く時間が経った後、彼女が姿を現しました。まず塩原はエミリに冷たい言葉を放った事を謝りました。
プールで遊んでいると、主人公はここ数日間感じていた「どこかで見たことがあるような光景」が何であるのかをようやく思い出す事ができました。
それは記憶でした。
いつの頃だったでしょうか、自分が子供の頃、近所の小さい女の子とこうして遊んだ事があったのです。それを塩原に言うと、塩原も驚いた表情で私もそう感じていた、と答えます。お互いの記憶を確認しあう二人。二人は幼い頃出会っていたのでした。
この時彼女の名前が恵美子だと分かります。

このイベントにより、主人公と塩原の間が一気に縮まり、お互いに相手の事を明確に意識するようになります。
12日目:
エミリが主人公の部屋から消えます。
主人公は町で出会った塩原とエミリを探しますが、エミリは見つかりません。
「この町の奇麗な眺めイベント」を 3 回サブキャラと過ごした時点で、主人公の心はサブキャラ寄りにシフトします。
この時主人公がエミリに抱いている感情は、妹を心配する兄に近いものです。

夜中、松田が家に訪れ「エミリは出て行くと言っていた。主人公に『ありがとう』と連絡してください」と言づけを受けたと聞きます。
13日目:
塩原とデートに行きます。行き先は4日目に二人で行きそびれた山です。
エミリが居ないのが少し寂しいですが、二人は過去の思い出を懐かしむようにしてそれを楽しみました。
14日目:
塩原とデートに行きます。行き先は神社。
夏祭りのときのイヤな思い出を仕切り直す為にも、そこは越えなくてはならないステップでした。
が、二人は境内で西園寺と会ってしまいます。西園寺は「ついこの間別れたのかと思ったら、もう新しい男を作ったのか」と塩原に言い放ちます。そして主人公の目の前で、ベッドの中の彼女の反応を語り始めます。
主人公は西園寺を殴り、そして塩原の手を引きながら神社を後にしました。
途中塩原が嗚咽をあげながら何度も主人公の手を振りほどこうとしますが、主人公は手を放す事がありませんでした。

主人公は彼女の手を引きながら、やはりこれもどこかで見た景色だな、と思いました。

主人公の家につきました。主人公はそこでようやく手を放し、彼女に胸の内を告白します。
塩原は無言で服を脱ぎ、主人公の元に近づきました。
主人公は首を横に振り、塩原を布団に寝かしつけると、照明を落とし、そのまま隣で眠りにつきました。
15日目〜END:
翌日、主人公は嫌がる塩原の手を引きながら、また神社に向かいました。境内では再び西園寺に出会いました。
西園寺は「どうだい? 僕の言ったとおりだっただろう?」と言いました。主人公は「ああ、君の言ったとおりだったよ」と言いました。西園寺は満足げに頷きました。
そして、主人公は塩原の手を握ったまま、「だからもう二度と俺達には近づかないでくれ」と言い残し、境内を後にしました。西園寺は主人公たちの姿を唖然とした表情で見送りました。

その日二人は初めて身体を合わせました。

塩原と身体を合わせた日の夜、主人公は長い夢を見ました。
STORY

そこはなにかの会場の様でした。
主人公は着慣れない服を着て、塩原がそこに現れるのを待っています。
が、彼女はいつまでたってもその場所に現れません。
心配になった主人公は、彼女の家に電話を掛けますが、いくら待っても電話口には誰も出ませんでした。

主人公はそれから更に暫く待ちました。ですが、やはり彼女の現れる気配がありません。
これは何かあったのではないかと思い、主人公は彼女のアパートに向かう事にしました。

塩原の家に入ると、前日までの疲れがよっぽど溜まっていたのでしょうか、そこにはぐっすりと眠っている彼女と、その両親の姿がありました。
主人公の声に目を覚まし、寝ぼけたまま時計をちらりと見る彼女。うんうん、と頷いたあと、もう一度はっとして時計を見ます。

――明らかに寝坊です。

両親をたたき起こし、半べそで塩原は家を出ました。
待機させていた2台のタクシーの一方に両親を乗せ、そして二人も、もう一方のタクシーに乗りこみました。
タクシーは二人の願いを乗せて動きだします。
更に二人の様子を見て気をきかせた運転手が、「とっておきの抜け道」を使って近道までしてくれました。ほっと顔を見合わせる二人。
が、途中で運転手はラジオを聞きながら「これはちょっと無理かもしれないねぇ」と言いはじめました。見ると、前方には長い車の列ができていました。ぽろぽろと塩原は涙をこぼしています。主人公は時計を見ます。そして静かに息を胸に吸い込み、はきだしました。
運転手に料金を預け、二人はタクシーを降りました。主人公が彼女の手を握ります。
塩原はまるで小さい子供がわがままをいう様に首を横に振り、その場に立ち止まろうとします。けれど主人公は立ち止まりませんでした。手を引いたまま走り始めます。
途中塩原が嗚咽をあげながら何度も主人公の手を振りほどこうとしますが、主人公は手を放す事がありませんでした。

それはいつかどこかで見た景色に似ていました。

ホテルが見えてきました。入り口では小奇麗なスーツに身を包んだ初老の男性が何度も何度も腕時計を見ています。
主人公が大きく声を上げて手を振ると、男性は大きく手を振り返して会場の中に入るように促しました。
走りながら主人公が男性に尋ねると、男性は両手を大きく丸印にしました。そのしぐさがあまりにも格好と不釣り合いだったので、主人公は思わずくすりと笑ってしまいました。



夏のとても暑い日でした。
大きい扉がゆっくりと開きました。拍手が沸いてきます。
その衣装は太陽の下、キラキラ輝く月の光のような光を纏っていました。

花嫁はブーケを空中に投げました。

ブーケは空中を舞い、そしてまるで導かれたように一人の少女の手の中に収まりました。少女は大きな麦わら帽子をかぶっていました。



二人はその少女の姿をどこかで見たような気がしたのですが、それを思い出す事は出来ませんでした。


物語の終了です。

長沢 エミリ(ながさわ えみり)

エミリは遠い未来の世界で、おばあちゃん助手より作り出された人工生命に近い存在です。人工生命に近いもの、とはいえその時代においてもヒトの生命を全くの無の状態から作り出すことは不可能な技術なので、その実態はおばあちゃん助手の意識ベースのクローンを土台として作られた半生命に近いものです。
エミリは本能的に「つねに主人公のそばに居たい」という意識を抱えています。それはおばあちゃん助手の意識が影響しています。

ゲーム中では殆ど彼女と共に行動する事になります。
また、主人公と二人で「この町で一番奇麗な眺め」イベントを体験すると彼女は精神年齢的に成長し(三段階)、最終的にはほぼ年齢相当の言葉づかいをするようになります(逆にイベントに出会わないと彼女の精神年齢はずっと小学生並みのままです)。

日にちのイベントプロット

1日目:
ゲームスタート
2日目:
エミリが山登りに行きたいと言い出します。
3日目:
(他のサブキャラの誰とも山登りに誘いません)
もしサブキャラと3人のエンディングを迎えていない場合、強制的に他のキャラと山登りに行く約束をします。
4日目:
エミリと二人だけで山登りに行きます。(この町の奇麗な眺めイベント)
未来の世界でのおじいちゃん博士とおばあちゃん助手と松田のやりとりを主人公は夢に見ます。
夢

そこでは、お爺さんが、熱心な口調で何かをおばあさんに説明していました。
おばあさんはうんうん、と頷いています。次にお爺さんは横においてあるパソコン(らしきもの)のモニター(らしきもの)を指差し、そして机の上にのっているヘルメット(らしきもの)を手に取ります。
ヘルメット(らしきもの)には複雑に色んな色のコードがついていて、それはまるで人の脳を取り出して血管に色をつけているみたいでした。少し、気味がわるいです。

お爺さんはそれをかぶり、静かに目を閉じました。そしてゆっくりと頷きます。
お爺さんの方を見ていたおばあさん助手は、端末に取りつけられている数百とも言えるスイッチを片っ端から上げていきます。機械のファンの音が室内に大きく響きわたります。その音のうるさい事といったらたまりません。まるで壊れた洗濯機の様な音です。
モニター(らしきもの)が点滅しました。
おばあさんはそれをのぞきこみ、飛び上がって手を大きく振っています。その表情を見る限り、なにか良い事が起きたに違いありませんでした。

おばあさんはお爺さんの元に近づき、その身体を揺らしました。
けれど、なにか様子が変です。
おばあさんの顔が曇って行きます。
おばあさんは何度も何度もお爺さんの身体を揺らすのですが、それはまるで糸の切れた人形の様に、前後に揺れるだけでした。

5日目:
エミリと二人だけで山登りに行ったのに伴い、エミリが精神年齢的に成長します。
主人公はエミリの様子が先日と少々変わったのを戸惑いますが、これも彼女が生活に慣れてきたのだろうと思い、受け入れます。

STORY 本屋に行くとエミリが本を買ってほしいと願います。
それほど高い本でもないので気軽に「いいよ」と言った主人公ですが、出してきたのがかなりベタベタな少女マンガだったので少々照れながらレジへ向かいました。
家に帰ってエミリは本を読み始めますが、本を読み終えたところで突然主人公に『キス』を求めてきます。そのマンガは少女マンガにありがちな最後にキスをしてハッピーエンドというモノで、物語にすっかり影響されてしまったエミは、そうすれば自分も「幸せ」になれると思いこんでしまったのです。
仕方なく主人公はエミリにキスを行います。
精神年齢は10歳[小学生](初期)→14歳[中学生]への成長です。

この日のキーワードはキスです。
6日目:
(ゲーセンの店長から8日目に夏祭りがあるということを聞きます)
駅に行くと、松田と出会います。主人公は松田に夢のことを話しますが、松田は少し考えた後、「それはいつか、本当に起きる事かもね」とだけ言い残し去ってしまいます。

STORY 暫く駅の周りを歩いていると、突然エミリが小さく叫び声を上げました。
何か音みたいなものが聞こえると言いだします。
主人公も『』を澄まして聞いてみると、確かにどこからか「からん、からん」と、ベルのような音が聞こえました。

音の元を探してみると、それは駅から少し離れたところにありました。
見ると、麦わら帽子をかぶったお爺さんが一人、屋台を引っ張りながら鐘を鳴らしています。立てかけられている旗には「冷た〜い アイスクリーム」という文字。

アイスクリーム屋のお爺さんは、二人がアイスクリームを買いに来ると嬉しそうに頷きました。人のよさそうなお爺さんです。主人公が興味本位で「儲かっていますか?」と聞くと、お爺さんはゆっくりと首を横に振り「ただの年寄りの懐かしみです」と、少し寂しそうに答えました。

二人はアイスクリームを食べながら家に帰りました。
帰り道、エミリは「あのお爺ちゃん、主人公に似ていたね」と言いました。
主人公は「そうかなあ?」と答えました。
この日のキーワードはです。
7日目:
(他のサブキャラの誰とも夏祭りに誘いません)
STORY 高校へ行くと沢之先生と出会いました。先生は何をするわけでもなく、ぼーっと誰も走っていない校庭を眺めていました。

主人公が声を掛けると、先生は「大サービスよ」と言って二人を屋上に誘いました。エミリは始めてみる学校の中にいちいち感動の声を上げました。
夏休み中とだけあって、校舎の中に生徒は数えるほどしか居ません。生徒も私服で校舎内にいるので、主人公たちの姿が特別目立つ事もありませんでした。
屋上へつくと、心地よい風が身体を包みました。屋上から見る外の眺めは絶景と言えるものでした。

エミリはやっぱり感動してフェンスにかじりつくようにして外の景色を眺めていました。そんなエミの姿を見ながら先生は「私も昔はあのぐらい髪を伸ばしていたのよ」と、少し照れたような笑みを浮かべながら言いました。
「でも、フラれて切っちゃった」と先生は言葉を続けました。主人公は「酷いヤツですね」と言うと、先生は大空を指差して「今はあの辺りにいるかな?」と答えました。

ずっと風景を見ていたエミが先生の指差した方向を見ながら、「今は好きな人がいるの ? 」と聞きました。先生は少し考えた後、「いたけど、またフラれちゃった」と静かに言いました。

帰り際、先生はエミリの髪の毛を撫でながら、「この『髪の毛』は大切にしなさいね」と言いました。
エミリは「はい ! 」と元気に答えました。

エミリを先に下の階に行かせた主人公は、先生と二人きりになりました。
主人公は先生に「ごめんなさい」と謝りました。
先生は空を見ながら「私ももう少しオトコ見る目つけなきゃね」と言いました。
二人は静かに唇を合わせます。そして先生は呟く様に「さようなら」と主人公に言いました。
主人公は頷いて、エミリの元へ帰りました。

その後ろで、先生の姿は霧の様に消えていきました。
まるで「初めからそこに存在していなかった」様に。
この日のキーワードはです。
8日目:
夏祭り(この町の奇麗な眺めイベント)
STORY 初めて見る幻想的な光景にエミリははしゃぎ回りました。
時にリンゴ飴を一口に咥えてしまったり、テキ屋の親父に喧嘩を挑んだりと主人公をはらはらさせますが、それでもまあ、楽しそうです。

数ある露天の中でも、特に彼女の気を引いたのは、三角クジの景品の(いかにも安っぽそうな)指輪でした。
さっそくエミリは何度かチャレンジしてみるのですが、さっぱり当たりません。
主人公も乗り気になって三千円ほど投入してしまうのですが、やっぱり当たりません。
最後には意地でも当てようとする主人公にエミリが止めに入るぐらいでした。仕方なく二人はその場を去りました。

すると、突然後ろから誰かが走ってきて、エミリの肩を叩きます。
それはなんと松田でした。松田は黙ってエミリの『手を触る』と、右指に先程までエミリが欲しがっていた指輪をはめました。
驚くエミリに対して、松田は今まで見せた事も無いようなやさしい微笑みを見せ、また走ってどこかへ行ってしまいました(その後ろをテキ屋の親父が追いかけていたように見えましたが、それは気のせいかもしれません)。

エミリは嬉しそうに指輪を主人公の方へ見せました。
主人公は松田の意外な一面を見て、なんだかとても安心したような気持ちになりました。
この日のキーワードは手を触るです。

エミリと二人で「この町の奇麗な眺め」を迎えたことにより、主人公は未来の世界のおばちゃん助手と(幼い頃の)松田の夢を見ます。
夢 一人の小さな女の子が、ぎゃあぎゃあ泣き叫んでいました。
周りには黒い服に身を包んだ大人たちが、忙しそうに動き回っているのですが、誰もその子の相手をしてあげません。

女の子は誰も自分の相手をしてくれない事が分かると、更に泣き声を強くしました。口からは涎が垂れていますし、鼻水も見えます。少し、情けないです。

暫く経つと、女の子の元に一人のおばあちゃんが駆けつける様にやってきました。
手に持ったハンカチで、女の子の涎や鼻水を丁寧に拭いて行きます。そしてぎゅっと抱きしめると、女の子はようやく泣きやみました。

おばあちゃんは女の子の背中をぽんぽん、と叩くと、その場を立ち去ろうとしました……が、女の子はおばあちゃんの足を掴んだまま、それを離そうとしません。
やれやれ困ったわね、といった表情でおばあちゃんは女の子を抱きかかえました。女の子は満足そうに微笑みます。

女の子は、真っ白い花に囲まれた写真を指差して何かをおばあちゃんに問いかけました。
おばあちゃんは目を閉じて、うん、とゆっくり頷きました。
続いて女の子が何かをおばあちゃんに問いかけました。
おばあちゃんは悲しそうな表情で、首を大きく2回、横に振りました。

女の子は不思議そうな表情で、写真の方をじっと眺めていました。
写真の前に置かれた紙には、毛筆で『長沢 宗一郎』とありました。
9日目:
(友人の荒川からプールのチケットを貰います)
エミリが精神年齢的に成長します。
STORY 朝起きてエミリと会話をすると、どうにもなにか引っかかります。
暫く会話をした後、主人公はその正体が何かようやく気がつきました。
それは彼女の「話し方」でした。
エミの話し方は少し前の子供のような喋り方ではなく、明らかに「年相当」と言える、どこか大人びた話し方をしていました。
主人公がそのことをエミリに言うと、エミリも頷きながら「不思議なの――まるで頭の中がどんどんクリアになっているみたい」と答えました。

エミリの様子は気にはなりますが、それだけを気にしていても仕方がありません。
生活用品がなくなりつつあったので、二人は商店街に出て買い物を行いました。
やはり、エミリは変わっていました。
以前なら間違えたようなおつりの計算もすらすら出来てしまいます。その変化は、時に主人公の迷いを増幅しました。一体彼女の身体に、何が起こっているというのでしょう ?
二人は黙って家に帰りました。

主人公が冷蔵庫に買ってきたモノをしまおうとすると、エミリは「それだと効率が悪い、こうすればいい」と、主人公の手からモノをとり、そしてそれをしまおうとします。主人公も「それだと駄目だろう ! 」と反論します。

ちょっとした事なのですが、それが口論になってしまいました。

口論。少し前まではこんな事もありませんでした。口論するにも、エミリの話し方は幼すぎたのですから。彼女は無垢な子供のように、何も知らなかったのですから。
今、明らかにエミリの中の何かが変化していました。
けれど主人公はそれをどうする事もできませんでした。
ただエミリの変わりように驚くだけでした。それを果たして喜んでいいのか、悲しんでよいのか分かりませんでした。

主人公の口がやんだのを見て、エミリは自分の冷蔵庫論の正当性を更に語りはじめました。困惑した主人公は、エミリにあることを口走ってしまいます。
お前、エミ……だよな ?」と。

その時、エミリも自分の変わりように、あらためて驚きました。
そして何よりも悲しみ、驚いたのは、主人公の自分を見る目が変わりつつあるという事でした。
「わかんないよ……「こうなっちゃってる」んだから」エミはその場に泣き崩れてしまいます。

主人公は自らの考えが間違っていた事に気付きました。
たとえ喋り方が変わっても、エミリはエミリでした。それ以外疑い用がありませんでした。
目の前で主人公の名前を呟きながら泣き崩れている少女は、どう考えても自分が好きな少女でした。

主人公はエミリをぎゅっと抱きしめました。エミリは主人公の顔を見つめて、目をつむりました。二人は気持ちを確かめあうように『キス』をしました。
この日のキーワードはキスです。
10日目:
(他のサブキャラの誰ともプールに誘いません)
STORY 明日のプールの為に、二人はデパートへ出かけて水着を買うことにしました。
主人公はすぐに自分のつける水着を決定したのですが、エミリはなかなか決まりません。ぱっと見て殆ど同じように見える水着を二つ比べながら、うんうん唸っています。
主人公はこれも彼女が女の子らしくなった結果なのかな、と思い諦めて待つ事にしました。
相当時間がかかりましたが、それでもなんとか水着が決定しました。
二人は帰路につきました。

帰り道、公園で一人佇んでいる塩原の姿を見つけました。主人公は声をかけようとしましたが、エミリがそれを制して彼女の隣に座りました。

塩原は呆然と地面を眺めていました。
足元には踏みつぶされたような跡のある小箱が転がっていて、そこからは時計のベルトらしきものが見えていました。

塩原は「フラれちゃった」と呟くのがやっとでした。
あとは声になりませんでした。それを見たエミリは、彼女の上半身を抱きしめました。塩原はエミリの中に胸を埋めて、泣きはじめました。
エミリは塩原の頭を撫でながらじっと身を貸していました。「声を出していいのよ」と言うと、始め声を押し殺すようにして泣いていた塩原は、わんわん大声を出して泣きはじめました。
主人公は、泣いている塩原とその頭を撫でているエミリの姿を見て、なぜか母親と娘を連想しました

暫くエミリの胸の中で泣いていた塩原は、やがてエミリの胸の中ですやすやと眠ってしまいました。エミリは覗きこむ主人公に「泣きつかれたみたい」と、答えました。
主人公は塩原を背中におぶってアパートに帰る事にしました。

帰り道、主人公がエミリに「塩原、大丈夫かな ? 」と聞きました。
エミリは「大丈夫よ、この子は強いもの」と言いました。
「なんとなく、そんな気がする」とつけ足して。

塩原を家に送り届けると、二人は自分の部屋にもどりました。
エミリは主人公に自分の着ていた上着を見せました。その丁度胸の辺りには、先程泣いていた塩原の涙が大きなしみとなってまだ残っていました。
エミリは『胸の部分を触り』ながら「これ、消えないかもしれないね」と呟くように言いました。「ずっとずっと先の未来になっても」
この日のキーワードは胸を触るです。
11日目:
プール(この町の奇麗な眺めイベント)
STORY 二人はプールに出かけました。
始め水着姿を恥ずかしがってなかなか主人公の前に姿を見せたがらなかったエミリでしたが、ひとたび水の中に入るとそんな事はおかまいなしにふざけ始めました。

やがてすっかり遊びつかれて帰ろうとする主人公ですが、エミリはまだ遊びたりないと言って、主人公をゲーセンに誘います。
また今度来ればいい、という主人公に対して、エミリは「今遊ばなきゃ意味がない」と、主人公を連れて行きます。しぶしぶ主人公はゲーセンに向かいました。
エミリのゲームの腕は相当なものでした。始めてやるゲームでもポイントを掴んでみるみるうちに進んで行きます。ギャラリーも増えてきました。

驚きながら画面を見ている主人公に対して、一人の男が話しかけてきました。それはゲームセンター「タイムマシン」の店長でした。
「彼女は君の恋人かい?」店長は、ごく自然に主人公に話しかけてきました。
主人公は躊躇なく答えました。「恋人です」と。
「ただちょっと最近、ワガママが多くて……」と苦笑しながらつけ足しました。

店長は少し黙った後、「君はどうなのかい? ワガママは言わないのかい?」と聞きました。
主人公は少し悩みながら「さあ……どうなのでしょうね」と答えました。
店長は「少しぐらいワガママを言うのが、男の甲斐性ってもんだぜ ! 」と言い、主人公の『尻をバシッと叩き』、接客用のテーブルに戻りました。主人公はなぜかそんな店長の姿をみて、少し懐かしい感覚を覚えました。



その日の夜、主人公はなかなか寝つけないでいました。
エミリの言った「今遊ばなきゃ意味がない」と言う言葉が、傷のある CD の様にぐるぐると頭の中でリピートされていました。
二週間。彼女を預かると約束した時間です。
横をみると、エミリが幸せそうにすやすやと寝息を立てていました。
あと4日。

エミリは、そもそもその登場の仕方も謎だらけでした。記憶も無い、身寄りもない、何も無い少女。けれど主人公の事だけははっきりと知っていました。

「恐らく、自分がここ数日見ている夢は、それになにか関係があるのだろう」それには、確信近い感情を抱いていました。そのぐらいあの夢はリアルで、そしてなにかを予期していると予感させる物でした。

――そして、今、自分はなにかの「核」に近づきつつある。
その結果は、必ずしも良いものでは無いのかもしれない。そう思うと、主人公はだんだん寝るのが恐くなってきました。
けれど、眠気はその意思とは反対に、じわじわと主人公の頭を侵食していきました。

「どんな悪夢を見たっていい。それが夢なら。それが『夢で済む』のなら」 祈りとも願いとも言えないような感情を抱きながら、主人公は目を閉じました。
この日のキーワードは尻を触るです。

エミリと二人で「この町の奇麗な眺め」を迎えたことにより、主人公は長い夢を見る事になります。
長い夢:
11日目の夜に見る夢は、これまで見てきた夢の集大成と言うべき長い長い夢です。
夢

そこでは、お爺さんが、熱心な口調で何かをおばあさんに説明していました。
おばあさんはうんうん、と頷いています。次にお爺さんは横においてあるパソコン(らしきもの)のモニター(らしきもの)を指差し、そして机の上にのっているヘルメット(らしきもの)を手に取ります。
ヘルメット(らしきもの)には複雑に色んな色のコードがついていて、それはまるで人の脳を取り出して血管に色をつけているみたいでした。少し、気味がわるいです。

お爺さんはそれをかぶり、静かに目を閉じました。そしてゆっくりと頷きます。
お爺さんの方を見ていたおばあさん助手は、端末に取りつけられている数百とも言えるスイッチを片っ端から上げていきます。機械のファンの音が室内に大きく響きわたります。その音のうるさい事といったらたまりません。まるで壊れた洗濯機の様な音です。
モニター(らしきもの)が点滅しました。
おばあさんはそれをのぞきこみ、飛び上がって手を大きく振っています。その表情を見る限り、なにか良い事が起きたに違いありませんでした。

おばあさんはお爺さんの元に近づき、その身体を揺らしました。
けれど、なにか様子が変です。
おばあさんの顔が曇って行きます。
おばあさんは何度も何度もお爺さんの身体を揺らすのですが、それはまるで糸の切れた人形の様に、前後に揺れるだけでした。

主人公はそのお爺さんの姿を、どこかで見たような気がしました。
記憶をたぐっていると、「からん、からん、からん」と、なにかのベルの音が頭に響きました。そして主人公は思い出しました。

(ああ、そうだ)
(あのお爺さんは、いつか駅前で見た、アイスクリーム売りのお爺さんにそっくりだった)


夢 一人の小さな女の子が、ぎゃあぎゃあ泣き叫んでいました。
周りには黒い服に身を包んだ大人たちが、忙しそうに動き回っているのですが、誰もその子の相手をしてあげません。

女の子は誰も自分の相手をしてくれない事が分かると、更に泣き声を強くしました。口からは涎が垂れていますし、鼻水も見えます。少し、情けないです。

暫く経つと、女の子の元に一人のおばあちゃんが駆けつける様にやってきました。
手に持ったハンカチで、女の子の涎や鼻水を丁寧に拭いて行きます。そしてぎゅっと抱きしめると、女の子はようやく泣きやみました。

おばあちゃんは女の子の背中をぽんぽん、と叩くと、その場を立ち去ろうとしました……が、女の子はおばあちゃんの足を掴んだまま、それを離そうとしません。
やれやれ困ったわね、といった表情でおばあちゃんは女の子を抱きかかえました。女の子は満足そうに微笑みます。

女の子は、真っ白い花に囲まれた写真を指差して何かをおばあちゃんに問いかけました。
おばあちゃんは目を閉じて、うん、とゆっくり頷きました。
続いて女の子が何かをおばあちゃんに問いかけました。
おばあちゃんは悲しそうな表情で、首を大きく2回、横に振りました。

女の子は不思議そうな表情で、写真の方をじっと眺めていました。
写真の前に置かれた紙には、毛筆で『長沢 宗一郎』とありました。

主人公はそのお爺さんの姿を、どこかで見たような気がしました。
一人で泣いていて。そして強情そうな性格を見せていて。
本人は本当は周りに甘えたくて堪らないのに。

(松田は、この時から俺を嫌っていたのかもしれない)

夢 研究室らしき一室で、一人の少女が両手を机にばんばん当てながら、しきりに何かを叫んでいました。

「――わからないんですっ ! 私には、この研究の意味がっ ! 」
「一体こんなことをして、なんの意味があるんですか !? 」
「結局私『たち』のやってる事って、過去の研究の、その過去をほじくりかえしているだけじゃないですかっ ! 」
「過去があるんなら、それをステップにしていかなきゃ行けないんじゃないですか !? 」
「ステップにして、踏み越えて、乗り越えて行かなきゃ意味がないんじゃないですか ? 」
「こんな研究の意味、私にはわかりません、絶対に分かりません ! 」
もうあの人の身体はないんです ! 死んだんです ! 『いない』んです !
「こんな研究、なんの意味も無いじゃないですか ! 」
「こんなの ! こんなの……こんなの――あなたが、可哀想すぎます……」

ずっと目を閉じて、少女の話を聞いていたおばあちゃんは、優しく微笑みながら言いました。
「――たぶん、祥子ちゃんの言うとおりなんでしょうね」

少女の話を聞いた後のおばあちゃんの表情は、まるで昔話を子供に語った後、その感想を聞いているように穏やかでした。

夢 真っ暗な部屋の中には、モニター(らしきもの)の光だけが浮かんでいました。

お父さん、お母さんへ。ちょっとした用事ができたので、しばらく留守にします。
私の事は心配しないで下さい。うまくいけば、それはほんのちょっとの留守で済む筈ですから(二週間ぐらいで済むと思います)

でも、虎太郎の餌はちゃんと時間通りにあげるようにして下さい。彼は餌をやる時間が少しでも遅れると、その「ふくしゅう」に、寝ている時身体の上に乗っかってツメを立ててきますから。
嘘だと思うなら、一度時間をずらしてみればよくわかると思います。
私はあの跡のおかげで、暫くお風呂に入れなかったぐらいです。

それで、ここからが重要なんですけれど、虎太郎の好きな餌は……
〜(そのあと延々と記述が続くので略)〜

私がなんでそんな事をするのかといえば、それはちょっとした「復讐」です。
聞き分けのない子供が、周りの人に迷惑を掛けた、その子への復讐、です。
そんな前時代的とお父さんは思うでしょう。お母さんは卒倒してしまうかもしれません。お母さん、大丈夫でしょうか ?
でも、私は本気なんです。ずっと、小さい時からずっと、私は思っていました。
「ずっとあの人を苦しめている彼に、いつか絶対モノを言ってやる」と。
 で、もし私が暫く帰って来れなかった時は。その時は、お父さんお母さんごめんなさい。
 えっと、


文章はそこで、唐突に途切れていました。17歳の少女にとって、自分の存在が消えてしまうというのはあまりにも突飛で、想像しようと思っても想像できないものでした。
彼女には「締め」の言葉が、浮かばなかったのです。

そして少女は、モニターに書きかけの文章を残したまま、旅立ってしまいました。

12日目:
朝起きると、主人公の部屋にエミリは居ませんでした
STORY 主人公は辺りを探しまわります。
昨日見た夢が頭の中にちらつきました。でも、それが真実か否かはあとで考える事にしました。とにかく今はエミリを探す事が先決です。

商店街、駅、ゲーセン、市民プール、山、神社、高校、デパート、本屋。
思い当たる箇所全てを回って探してみますが、やはりエミリの姿は見つかりませんでした。

既に辺りは暗くなりかけていました。夢の内容が、また、ちらつきました。
( あんな非科学的な事は信じないし、信じ「たくない」けれど―― )

今、エミリの場所が分かるかもしれない、唯一の相手の所へ主人公は向かいます。
「松田」の部屋へ。
主人公は、松田の部屋を乱暴にノックしました。
松田は何事か、と思ってドアを開けますが、それが主人公だと分かるとすぐにまたドアを閉めてしまいます。
「エミリが……居ないんだ」主人公は、扉の向こうへ向かって語りかけました。
「朝からずっと探してたけど、見つからなくて――」「…………」ドアの向こうに気配は感じるのですが、松田は扉を開けようとはしませんでした。
主人公は言葉を続けます。
それは今朝見た夢の話でした。夢のはずなのに、いやに鮮明な夢の話でした
その全てを語りおえた時、松田の家の扉が開かれました
松田は「入って」と短く一言、言いました。

松田の部屋の中はひどく殺風景な部屋でした。ぬいぐるみもポスターもなく、ただ部屋の中央に小さなガラスのテーブルと、ノートパソコンらしきものがあるだけです。
部屋の角にはゴミ袋と手さげのバッグが居心地悪そうに置かれていました。

松田は外を眺めながら、自分がこの世界に来た理由、そしてエミリの役割について主人公に語りました。

――私はあなたという「存在」がおばあちゃんを苦しめているのを見てられなかった、そしてあなたに「復讐」する為にここに来たのだ。
そしてエミリという存在は、おばあちゃんが「あなたに出会いたいがだけに」産み出された存在で、その目的は「あなたと出会った時点」で既に完結していたのだ
――と。

その話はあまりにも突飛で、信じられない話でした。けれど、「信じない」にはあまりにも条件が揃っていすぎました。
自分の見る夢、エミリの行動、松田の行動、そしてエミリの消滅――。

主人公はエミリの精神的な成長について聞きました。「ここ数日の、彼女の急激な変化も何かそれに関係があるのか ? 」松田は少し目を伏せて、はっきりした事は私にも言えないけど、と前置きをおいて答えました。
――たぶん彼女はああやって自己を成長させる事で、あなたと過ごす時間を一日でも長く感じたかったのではないか。小さい頃の自分、子供から大人にかわりつつある自分、そしてもうじき大人になる自分、あなたの存在が近くなればなるほど、全てをあなたと共有したかったのではないか――

分かった、と主人公は返事をしました。
そして「エミリはもう消えてしまったのか ? 」と聞きました。松田は少し間を置いた後、「わからない」とだけ答えました。

主人公は「ありがとう」と言うと自分の部屋に戻りました。

その日は久しぶりに一人で布団に入りました。
いつもと同じ布団なのに、その布団は主人公にとっていやに広く感じました。
13日目:
朝起きると、やはりエミリは居ませんでした。
STORY 主人公は支度を整えると、外に出かける事にしました。エミリが帰ってきた時の為に、テーブルの上には「暫く外出してきます。食べ物は冷蔵庫の中に入っています」と書き置きを残しておきました。
昨日松田は、エミリがいるかどうかと聞いた時にわからない、と答えました。
事実を知った今、エミリがまだこの世界に残っているというのは、僅かな可能性だという事はわかりました。
けれど今はそれを信じる事しかできませんでした。
たとえ質問に答えた時の松田の表情が、どんなに暗いものであっても

部屋を出ると、そこにはなんと松田の姿がありました。
松田は「どこに行くの ? 」と聞きました。
主人公は「エミリを探しに行く」と答えました。
松田は「私も行くわ」と言いました。「一人より二人の方が効率がいいでしょう ? 」と。

二人は昨日よりずっと念入りにエミリの姿を探しました。
けれどやはり、エミリの姿は見つかる事がありませんでした。

すっかり辺りが暗くなった頃、二人は主人公の部屋にいました。
もしかしたら、エミリが帰っているかもしれない、そう願いを込めての帰宅でした。

しかし部屋の中に、エミリの姿は、ありませんでした。

主人公は松田に夕ご飯をご馳走しました。
「宗一郎スペシャルだぜ」と言うと、スパゲティの上に目玉焼きを乗せました。
「他にレパートリーは?」と松田が聞くと、主人王は「あとはカップめんと、お湯で暖めるカレーと……」と、レトルト食品の名前を次々と上げていきます。
二人は久しぶりに笑いました。
けれどそんな食事の間にも、ふとした拍子に間が空く事がありました。そして二人は、その間を埋める事ができませんでした。

食事が終わった後、主人公が空を眺めていると、松田が近づき、そして主人公に謝りました。
私は今まであなたの事を親の仇みたいに思っていた。それはずっと過去を追いかけているだけで進展のない、進歩のない人間だと思っていたから」そして、ゆっくりと首を左右に振りました「けれどそれは違うのが分かった。あなたはこの世界の中でこんなにもあがいている。動いている。好きな子を探している。……生きている
そして松田は、主人公の頭を胸で抱えるようにして抱き、『主人公の髪を撫でました』。
「さようなら」


松田の姿が、ゆっくりと消えていきます。

「もしかしたら、神様にお願いすれば、エミリはまた姿を現すかもしれない」

松田は驚く主人公に対して、少し微笑みながら言葉を続けました「なんとなく、そんな気がする」

松田は続けます。「また私はカタチを変えて、あなたの前に現れるわ……きっと」
主人公が腕を伸ばして松田の「居た位置」を探りますが、それはまるで空中に浮かぶ雲のようにつかみ所がありませんでした。
松田の姿がどんどん薄れていきます。
その時、松田の声が聞こえたような気がしました。
「ねえ、もしかしたらその時は私達――恋人同士になれるかしら ? 」


そして松田は消えました。
この日のキーワードは髪を撫でるです。
14日目:
STORY その日、主人公は一日中家に居ました。
外を捜し回るより、家の中に居た方が良いような気がしたからです。
だって、エミリの家は明日まで「ここ」なのですから。
彼女の帰るべき家は、「ここ」なのですから。
ここで最後のコマンド先行入力型システムが動きます。対象相手が居ないHシーンです
これまでのエミリシナリオに出てきたキーワードをコマンドとして入力するとエンディングへ進みます
順番、種類を間違えると主人公の姿が消えるバッドエンドになります。

キーワード1「キス」
STORY 部屋の角にはいつかエミリがねだった少女マンガが転がっていました。
主人公はそれをぱらぱらとめくりました。
最後のページが目に止まりました。
それはありがちなハッピーエンドで終わる少女マンガでした。


「誓います」二人はゆっくりと頷いて、そして唇を合わせました。
夏のとても暑い日でした。
大きい扉がゆっくりと開きました。拍手が沸いてきます。
その衣装は太陽の下、キラキラ輝く月の光のような光を纏っていました。

花嫁はブーケを空中に投げました。

ブーケは空中を舞い、そしてまるで導かれたように一人の少女の手の中に収まりました。少女は大きな麦わら帽子をかぶっていました。


その少女は、自分が愛している少女に似ていた様な気がしました。
キーワード2「耳触る」
STORY からん。
どこからかベルの音が聞こえました。主人公は外を見なくても、その相手が誰なのかを想像することができました。

真夏の太陽の光が照りつける中、大きな麦わら帽子をかぶったお爺さんは黙ってその屋台を引き続けていました。額からは汗がふつふつとわき出していました。
お爺さんは言いました。
「ただの年寄りの懐かしみです」と。

からん。
キーワード3「髪」
STORY 空には大きな入道雲が広がっていました。

あの時、先生は空を指差して言いました。

「今は、あの辺りにいるかな ? 」

主人公にその姿を見つける事ができませんでした。そして、そのかわりになることもできませんでした。

今なら自分の行っていた行為が、間違っていたのだとはっきりと言う事ができます。

(俺はもっと先生を抱きしめるべきだったんだ)
(そして先生の髪を、腰まで届くぐらいの長い長い髪を優しく撫でるべきだったのだ)、と。

「ごめんなさい」と主人公は呟きました。
いつの間にか隣に座っていた先生は空を見ながら、やさしく頷きました。
二人は静かに唇を合わせます。
そして主人公は「さようなら」と先生に言いました。
先生も「さようなら」と答えました。

そして先生は静かに、主人公の目の前から消えていきました。

キーワード4「手を触る」
STORY 部屋の片隅には、銀色のリングが転がっていました。
主人公はそれを手に取りました。
目を閉じると、あの時の事が浮かんできます。


「へへ、いいでしょ〜、そ〜ちゃん」
「欲しいって言っても、あげないよ〜」「い、いらないぞそんな物 ! 」
「ホントは欲しい癖に〜。ふ〜んだ ! 」


「わわ、キレイ ! 」
「お前、花火見た事なかったのか ? 」
「うん。わ、すごいすごい ! わ ! わ ! わわわぁっ ! 」


「お前、またそれ見てんのか ? 」
「うん。『これ』はね、そ〜ちゃんと松田おね〜さんの、両方の贈り物なの」
「でも、それ実質松田がパクッ――」
―― !
「――って、なんで突然キスすんだよお前わぁ ! 」
「そ〜ちゃんはエミの為に頑張ってくれたんだから、その気持ちがこのなかに詰まってるの。すっごく、沢山、いっぱい。」
「……」
「だから、両方の贈り物なんだよ」
「――ん、まあ、とにかく――……大事にしろよ ?」
「うん ! 」
キーワード5「キス」
STORY 蝉の鳴く声が激しさを増してきました。
何か飲もうかと冷蔵庫を開けると、そこにはジュースが整然と並べられていました。

「だからっ ! このジュースはここに入れた方が冷えるんだってば ! ねぇ ちょっと、そ〜ちゃん聞いてる ? 」
「…………」
「こっちの方が、効率が上がるの ! 」
「…………」
「そ〜ちゃん !? 」
「お、お前、エミ……だよな ? 」
「え、何言ってるの !? そ〜ちゃん」
「お前……本当にエミ……だよ、な。あのさ……」
「な、なに……言ってるの ? や、やめてよ。そうに決まってるじゃない」
「…………」
「ねえ、そ〜ちゃん、私……エミ、だよ ? どうしてそんな事聞くの ? そ〜ちゃん ? 」
「…………」
「ねえ、どうしてそんな事聞くの ? やめてよ、そ〜ちゃん。やめてよ ? やめてよ……」
「…………」
「わか……わかん……ないよ……私、「こうなっちゃってる」んだから」
ひ……ひく……グス……グス……。
「わか……ないよ、そ〜ちゃん。そ〜ちゃ……そ……」
グス……グス……グス……グス……。
「ねえ、そ〜ちゃん、私どうすればいいの ? わかんないよ !? ねえ、どうなってるの ? そ〜ちゃん……ねえ、どうすればいいの ? 私、わかんない、わかんない、わかんないよぉ ! 」
主人公はエミリをぎゅっと抱きしめました。
「ゴメン。俺が間違ってた。バカだった。エミは……」
エミリは主人公の顔を見つめて、目をつむりました。二人は気持ちを確かめあうように唇を合わせました。
「エミは……エミだよ」
キーワード6「胸を触る」
STORY コンコン !

ノックの音が聞こえます。「そーいちろー ? 」
「空いてるよ。鍵は掛かってない」
「そーいちろー。……入るよ」

塩原はちょこんと主人公の隣に座りました。
「エミリ……居なくなったんだって ? 」
「ああ」「……」

「きっと……帰って来るよ」「ああ」
「……」

「お前は、もう大丈夫なのか ? 」
「もう全然オッケー ! そりゃもうエミリのおかげ……あ……」
「いいよ。気にしなくて。続けて ? 」
「――うん。いっぱいエミリの胸で泣いたから、かな。すっきりした。今はもう、なんであんな風に執着してたのかなって、わかんないぐらい」
「そっか……そっか。良かったな」
「うん」


「じゃ、あたしそろそろ用事あるから、行くわ」
「また補習授業か ? 」
「うん……って、だから違うって ! 部活 ! 」
「がーんばーれよー ! 」

「……そーいちろー ? 」
「ん ? 」
「エミリ……帰って来るよな ? 」

「……来るさ。鍵は掛かってない」


そして扉は静かに閉じられました。
キーワード7「尻を触る」
STORY 部屋が暑くなってきたので、エアコンの温度を一度下げました。
外を見ると、子供たちが元気に遊んでいます。

「エミ……お前無茶苦茶ゲーム上手いんだなあ」
「そ、そ〜ちゃん。な、なんか、止まらないんだけど……」
「まあ、ギャラリーもいっぱい居るし……とりあえず頑張れ ! 」

「彼女は……君の恋人かい ? 」「ええ」
「お〜ォ ! いいねェ、こりゃまた美人の恋人さんだ」
「でも、ちょっとワガママが多くて……」
「ワガママ ? 君はワガママを言わないのかい ? 」
「ワガママ? 俺は……わかりませんね」
「少しぐらいワガママを言うのが、男の甲斐性ってもんだぜ ! 」
「――かいしょう、ですか」


不思議な店長でした。
主人公はあの店長に会うと、どこか照れるような、依存してしてしまうかのような、そんな妙な感覚にとらわれていました。
もしかしたら。
あの人には幼い頃に感じた、父の姿を重ねていたのかもしれません。
キーワード8「髪を撫でる」
STORY 窓を見ると、少し季節を先取りしたトンボが止まっていました。
トンボは何かをそこで待つかのように、羽を休めてそこに留まっていました。

「あなたはこの世界の中でこんなにもあがいている。動いている。好きな子を探している。……生きている」
不器用な生き方をしていた少女は、その言葉を自らに噛み締めるように言ったのでした。

主人公は口に出してその言葉を言ってみました。

「俺はこの世界であがいている」
「俺は動いている」
「俺は好きな子を探している」
「俺は生きている」
「――エミリも、生きている」
「……そうだろう ? 松田 ? 」

その質問に答える相手は、この世界にいませんでした。

そろそろ辺りがオレンジ色に包まれてきました。
遠くでカラスが鳴いているのが聞こえます。
いつの間にかトンボは、どこかへ飛び立っていったみたいでした。
キーワード9「SEX正常位」
STORY 目の前のものが、だんだん白くかすんでいきました。
これか世界から消えるということなのか ? と主人公は思いました。
周りのものがぐにゃりとひしゃげ、そしてそのカタチを変えていきます。
主人公は静かに目を閉じました。

光に包まれる中、主人公はひどく懐かしい声を聞いたような気がしました。その声は、いつか自分が妻として愛した人の声に似ている様に思えました。
声は言います。「二週間、ありがとう」、と。
主人公は「ずいぶんと長い二週間を過ごしていた様な気がする」、と答えました。
「本当にご苦労様でした――」声はだんだん主人公の元から、遠ざかっていくようでした。

「待って ! 」主人公は『彼女』を呼び止めました。
「まだ、『お礼』を貰っていない」
「お礼 ? ――」
主人公は続けました。「書いてあっただろ ? 手紙に。
お礼は二週間後にお支払いします
って。俺はワガママだから、ずいぶんと高くつくぜ」
「――どのくらい ?」
「お金で買えないぐらいのものを頼むかもしれない」

暫く間が空いた後、声は言いました。
「あなたは、昔からワガママですから」
主人公は頷きました。
「少しぐらいのワガママは、男の甲斐性です」


心地よい風が、全身を包みました。
それはまるで、自分がこの世界に生まれる少し前に居た場所に似ているような気がしました。

『彼女』は言いました。
「この世界は私が責任を持って護るから、あなたはこの世界で生きなさい」、と。
主人公は「ありがとう」と言うと静かに目を閉じました。

そして、意識が途切れました。
15日目〜END:

 ドンドンドンッ! ドンドン! ドン! ドンドンドン!

主人公は乱暴なノックの音で、目を覚ましました。
その音はあいかわらず安っぽいホラー映画を連想させました。
後ろに殺人鬼が迫っている中、キャンプ場の森の奥深くに見つけた洋館のドアを必死にノックする時みたいな音でした。

 ドンドンッ! ドンドン! ドン! ドン! ドン!ドン!ドン!ドン!

主人公は目を閉じると、大きく息を吸い込み、そしてゆっくりとそれをはきだしました。
立ち上がり、玄関の扉に向かいました。
ドアのノブに手をかけました。のぞき窓から相手を確認する必要はありませんでした。
主人公はその扉の向こうに居る相手を想像する事ができました。

ドアを開けました。

その大きな麦わら帽子をかぶっている少女は、主人公の顔を見るなり抱きついてきました。
「そ〜ちゃんっ ! そ〜ちゃんっ ! そ〜ちゃん…… ! 」
主人公は両手で彼女を抱きしめると、麦わら帽子をかぶり、少女の頭を撫でました。
そして言いました。

「おかえり、エミ」
「おかえり ? 」
「おかえりって言われた時はね、『ただいま』って答えるんだよ」
 少女は主人公の顔を見つめ、腕で涙をぐい、と拭きました。
ただいま、そ〜ちゃん

主人公はポケットに入れていたリングを取りだすと、彼女の左手を手に取り、それをくすり指にはめました。
「なんかこれ……すごくきれいだね」と言うエミリに対して、主人公は優しく微笑みました。
「たいせつな、もの ? 」「うん、そうだよ」頷きます。
少女はにこやかに微笑みながら「ありがとう」と言いました。

主人公は少女の肩を手に持ち、少女にキスをしました。
少女は目を開いたまま、それに身体をまかしていました。
不器用なキスでした。
けれど、焦る必要はありません。
キスの練習をする時間は、まだまだ沢山あるのですから。
二週間かけても、一ヶ月かけても、一生かけても、時間は沢山あるのですから。

そう、この物語もまた、キスをしてハッピーエンドの物語でした。

物語の終了です。

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